上岡洋介 <自宅アトリエにて>
●転機
指導者のいない高校の美術部員3人は「ちゃんと美術を習いたい」という思いで暗中模索の日々をおくっていた。そんなとき、四万十市の画廊で後に師匠となる宮崎嘉夫さんと出会う。放課後3人は、自転車で山路の宮崎さんのアリトエに通い詰める様になる。そこで宮崎さんに師事している一般の人達に交じって、同じモチーフを描いて展覧会に出品した。油絵を専門的に学ぶ環境を得た上岡は絵画の技術・制作の精神を習得した。
目的に向かって歩みだした上岡は、大阪芸術大学に合格する。4年間、具象絵画を専門的に学び、卒業後は幡多に帰って来る。県展・四万十市展などに意欲的に出品し、【県展】洋画特選1回・褒状3回、【市展】洋画無鑑査・褒状4回などの評価を受けている。
2009年10月 第63回 高知県美術展覧会 特選を受賞した作品からは、貪欲に新たな試みを続ける、制作者としての強烈な探求心がうかがえる。指導者として、もの造りに携わる者としてあるべき姿を、指し示しているようにも見える。
●工芸品
稼業の米穀店を経営しながら、雑貨屋からの依頼で工芸作品の制作にも携わっている。海岸で拾った流木を再生したり、錆の付いたままの金属を利用した商品も造っている。本来の役目を終えた、朽ちたモノの美しさを見いだす。これまでとは違う意外な素材の組み合わせの風合を楽しむ。見るものに新しい味わい方を提案してくれる。
●指導者
後進の指導にも積極的でこれまでに5人、芸術大学合格へと導いている。地域の人々への絵画指導にも意欲的で、四万十市からの要請で平成18年から、ふれあいセンターの絵画教室
(11月〜3月)で一般を対照に指導している。
●予感
自宅敷地内に併設されるアトリエの壁面に編集者は目がとまった。歯車・バネ・クサリ・クランプ・ノコギリ…第三者にはゴミ同然のモノが、上岡に見いだされ壁に掛けられていた。作品の素材となるのか、工芸品の部品となるのか、単体のオブジェとして成立しそうなモノが出番を待っていた。まだまだ造り続けたい。造り手・上岡の明確な意志が感じらえる。新しい作品の胎動とも言える次回作誕生を予感した。