のどかな三原の山間で、今日もい~ちゃんは元気に大根の種まきに精を出している。
い~ちゃん(東 伊豆雄さん)は8年前よりふる里に帰り、米や野菜作りをしているお百姓さん。
「畑が2.5反、田んぼがおよそ5反くらい。一人じゃけん精一杯よ」
とい~ちゃん。
奥さんの俊子さんは、
「私は都会育ちやから、田舎に帰ってお百姓仕事はできん!」
と、猛反対だったとか。
でも今では旦那様の良き理解者としてお手伝いをしている。
「収穫した野菜やお米は、全部ふれあい市かお客さまへの直接販売。作り手、売り手、買い手の顔が見えんと不安ながよ」
と、い~ちゃん。
自分の作った野菜が「おいしかったぜ!」と言って頂く事に最大の喜びを感じるそうです。
三原村へUターン
い~ちゃんは昭和20年生まれの66歳。
地元の学校を出て、自衛隊に入隊。
北海道の帯広駐屯地で頑張ったそうですが、性が合わず26歳の時、神戸の三井グループ系の会社に就職し、クレーンオペレーターとして32年間勤めた。
57歳で早期退職し、郷里の三原村に帰ってきた。
「退職する時点で、三原に帰って農業することは決めていた。問題は女房を説得する事じゃった」と、笑いながらい~ちゃん。
第二の人生として田舎に帰り農業、といってもそう簡単にはいかなかった。
「知識もないし農具もない。
まずは土造りから始まりとにかく苦労の連続だった」と振り返る。
お日さまと大地の恵み
毎日、菜園関係の本を読みあさり、全て自己流で栽培に挑戦。
今では四季折々、旬の野菜を作っている。
「旬のない現代の食生活はいかん。昔からの季節に応じた日本の食文化はどこに行ったんじゃろう!」
と、い~ちゃんはビニールハウス菜園はせず、露地栽培にこだわっている。
「春はえんどうや玉ねぎ、夏はきゅーりやスイカ、秋はかぼちゃにさつま芋、冬は大根、白菜、ブロッコリー等々」
と、自然に逆らわず、お日さまと大地の恵みを一番大切にしている。お米も富山県のコシヒカリ100%種子を毎年取り寄せて栽培している。
販売に関しても何も解らなかった。
ある時、ほうれん草を市場に持って行ったら「一束10円」。包装と手数料引いたら3円しか残らない。
「店頭100円で売られているものが作り手には3円の利益。千束つくっても三千円。これじゃあ苗代はおろか汗代すらでない!」とがっかり。以来、自分の作った物は直販所に置いてもらう事にした。
「お米も野菜も土と水が命。そして『美味しく育て!』と作物に念じて作りよるがよ」と底抜けに明るい笑顔で話してくれた、い~ちゃんでした。
東 伊豆雄
昭和20年8月7日生れ
幡多郡三原村下長谷