陶芸を通じて、生涯「自分さがし」の旅
四万十市安並で陶房「ねねむ」を主謀している橋村夫妻。
夫婦でありながら、お互いのアイデンティティを確立して行く上において、なくてはならない相互関係を築いている。
二人とも現代工芸美術家協会会員で
一彦さんは2005年、06年、09年の3回、日展に入選。
るみさんは1983年、第11回中日国際陶芸展「トルソー」に入選。
以後、日本現代工芸展等々で活動している陶芸家です。
結婚して30数年、今でもお互いを刺激し合い、創作活動に励んでいる。
一彦さんは土佐清水出身で、中学卒業後、六年間大阪に集団就職。
「当時は学びたいけど家庭の事情で学べない人がいっぱいいた」と振り返る。
たまたま怪我で入院中、自分を振り返り「もう一度勉強し直す」と決意し、七年遅れで清水高校に入学、そして大学へと進学。
卒業後、郷里に帰り教職員となる。
「陶芸をやりだしたのは、妻であり師匠でもある、るみさんと知り合ってから」
と一彦さん。
これまでの不完全な自分にとって陶芸という手法での自己表現の追求にのめり込むことになる。三年前に教職を退職し、「作品=自分で、まだまだ不完全。少しでも完全に近づくために創作し続ける」と、一彦さん。
彼の妻であり、また師匠でもあるるみさんは、日展(陶芸部門)にて、高知県内で初めて入選した田辺陶豊氏の長女として生まれ、その影響を強く受け、子どもの頃より芸術の環境の中で育ち、迷うことなく多摩美術大学に進学し、洋画、陶芸等を学ぶ。
帰郷し父のもとにて作陶活動を続け、一彦さんと知り合い結婚。
それが彼女にとっては大きな転換期となる。
「それまで、父の影響で創作活動はしてきたものの、『何のために!』というハッキリした目的のない自分がいた。私は一彦さんに造型というテクニックを教えることはできたが、精神的には随分教えられた」と、るみさん。
夫婦であって、お互い学び合う二人の相互関係がうまくからみ合い、その刺激がより一層の創作意欲に結びついているようです。
「涙を流しながら議論したこともあるんですよ」と、芸術家ならではのエピソードも・・・。
「現代工芸は、感性をもとにした美の追求で、作品を通して社会に対する何らかのメッセージ性が重要。既成概念を取り外してこそ新しい自分を発見できる面白さがあり、自由な発想の中にこそ感性豊かな作品ができる」
と一彦さん。
また、「物質文明一辺倒の現代社会から、もう一度日本人が最も大切にしてきた「心」の文化を見直すべき時。そして田辺陶豊師匠の豊かな創造の精神を受け継ぎ、次世代に引き継ぎたい」
と、素敵な作品が無造作に並ぶアトリエで熱く、熱く語ってくれた一彦さんとるみさんでした。
橋村 一彦さん、るみさん
1947年5月2日生 1951年8月30日生